2016年10月26日

壁蝨と煙草

 夏の蒸す夜は、何度も目が覚める。汗をじっとりと吸い込んだ敷きっぱなしの布団で、健史がもがくような寝息を立てていた。布団を蹴散らし、まるで子供のようだ。その側に転がるビールの空き缶を蹴らないように、べたつく足で床を歩く。  冷蔵庫に麦茶がない。寝る前に沸かしたばかりの薬缶の中...