2017年8月30日

映画『コーヒー&シガレッツ』感想


喫茶店でだらだら過ごしながらとなりのテーブルの会話を聞くのが好きだ。
脈絡のない会話、背景を知らない人物どうしの毒にも薬にもならない掛け合いが、店内に流れるどんなジャズよりも心を撫でる。(大手を振って言えるような趣味ではないが……)

最近スモーカーデビューしたので、満を持しての『コーヒー&シガレッツ』鑑賞。
もくもく煙吐きながら観て、しみじみ良い映画でした。

「ランチにコーヒーと煙草だけなんて。身体に悪いぜ」という冒頭がまさに「パルプ・フィクション」的な意味での「たいした映画じゃないぜ」というそっけない謙遜で、実際に映画のなかで交わされる会話は何気ない。格好つけない格好良さみたいなものが、そこにはある。

だからこの映画は、「コーヒーと煙草にまつわる映画」というよりはむしろ、「コーヒーや煙草のような映画」と言った方が近い。
コーヒーを嗜むように、煙草をふかすように、となりのテーブルの会話を立ち聞きするように、『コーヒー&シガレッツ』を観る。そんな感じの作品。

ラストのパート、労働者階級のおじさん二人の会話がたまらない。
「コーヒーをシャンパンと思おう。人生を祝うのさ」
「おれは普通のコーヒーが好きだ」
「ヤボなやつだな。人生を楽しむってことを知らない。こんなまずいコーヒーがいいなんて」
「本当だ、確かにまずい」

まずい、という言葉に対する、深い愛がある。

2017年はジャームッシュイヤー。
『パターソン』『ギミー・デンジャー』が連続して公開されます。
『パターソン』は近いうち鑑賞予定。とても楽しみだ。


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